『カカフカカ』2巻&『東京タラレバ娘』3巻
石田拓実×東村アキコ 友情対談
“ガチで語る わたしたちの少女マンガ論!

―東村さんと石田さんが昔からのお知り合いというのは、マンガ大賞にも輝いた東村さんの『かくかくしかじか』(集英社刊)でもおなじみですが、今日は改めてお二人の友情の歴史からお話を伺いたいです!

東村:
『かくかくしかじか』で描いたように、「クッキー」のパーティーで出会ったんだよね。へんなミイラの人形みたいの腰にさして、矢沢あい先生のそばの床でビールラッパ飲みしてた。

石田:
あー、エジプト展のみやげ持ってたんやな。

東村:
それで知り合って仲良くなって、私、そのあと大阪に引っ越したんで、石田さんちの実家によく遊びに行くようになったの。石田さんは生まれてからずっとその実家に暮らしてて、あたしは転勤族だったから、生まれた家にずっと暮らしてるっていうその感覚自体が不思議だったんだけど。さらにそこは、生まれたときからの服が、石田先生の部屋にあるタンスに、ぎゅーぎゅーにつまってるっていうか、そういうかんじの濃密な家だった。

石田:
姉妹三人分の人生がすべて。そのために三畳間が改装されて服部屋になったほど。

東村:
すごい服があった、地層のように。私、デビューが遅くてOLやってからだったんで、石田さんのことは、“昔から読んでる先生!”、みたいなかんじだったんだけど、遊びにいっているうちにその“先生”感はガンガンなくなっていってた。

石田:
わたしもアキコはんのマンガ好きで、『きせかえユカちゃん』がはじまる頃にはふつうに“東村せんせーやん”ってかんじだった。

東村:
「読んでますー」とか言われて。

石田:
“ええ新人がでたで”ってかんじで。

東村:
“この子いいもんもってるわー! 的な?(笑)

石田:
それで、“ファっ!ていくやろなー、この子”って思ってたら、予想を上回る速さでファっ!といきおりましたわ。

―石田さんのおうちにはマンガいっぱいありますけど、ご自身が描いていらした「ぶ~け」「クッキー」は特に雑誌のまま保管されてて、お二人が同時に掲載されている号もいっぱい現存してますよね。

東村:
石田さんちって、たしかに「ぶ~け」と「クッキー」大量にある。捨てられないんですよね、モノを。

石田:
デビュー前後の「ぶ~け」は全部ある。

東村:
私、アシスタント歴がなかったから人の作業現場を見たことなかったの。だから、いろんなマンガの道具とかを知らなくて、石田さんとこに手伝いに行ってはじめて、いろんなことを教わった。あと、締切の修羅場っつーか地獄っつーか“あっ、こんなほんとに、こういうマンがとかドラマみたいなことあるんだ”っていうくらい、凄いのを間近で見て…。で、マンガをどうつくるのか、すごい勉強になったんですよ。

石田:
修羅場の勉強…。

東村:
私は、割と原稿がはやいんですよ。あんまぎりぎりにならないから、毎月、自分のがおわって石田さんのとこ手伝いに行くとか、そういう感じで。それが、普通だったらどっちも連載してるんだから、そういうのってないじゃないですか、ふつうは。編集さんが、「東村さん、終わったあと石田さんのとこ行ってね」みたいな指示があるくらい。私、自分が毎月行ってたんだから!妊娠してた時も行ってた!

石田:
腹に画板のせてトーン貼ってた(笑)

東村:
あと、忘れられないのは、石田さんのとこはお姉ちゃんが二人いて、二番目のまさこっていうお姉ちゃんが、普通だったら、来た人に「どうもーお世話になってます妹がー」みたいな感じのあいさつがあるじゃん。私も「すみませんお邪魔してます、お友達で…」みたいな感じであいさつをしようかなって思ってたんだけど、いきなり、ばーんって隣に座ってきて「焼酎にきゅうり刻んだの入れたらメロンの味になるで」て。

石田:
うちの一家は来客大好きで、来客あるとテンションあがって距離感がわからなくなってしまうんですよ。

東村:
で、「ああ、そうなんですか~」とか言ったら、二言目が、「チョリソー食べる?」。私が、「えっ」ってなって、そしたら「チョリソー食べる?チンしてくるで!辛いけどな!辛いけどな!!」とかわけわからないテンションで。あっ、そのときモーニング娘。の録画を見てたんだよね、みんなで。仏壇の横にテレビがあって、そこで、モー娘がばぁっーってやってるのを、“この子アレやな”とかって見てて、なんか家のレイアウトとかもちょっと謎で、なんかいちいち変わってた、石田家。

石田:
そう!葬式のときとかに、ここの一角謎だねって改めて写真撮るっていう。野球の優勝したポスターと、姉のネックレス飾りと、置物とか、そこの一角にきゅってなってて、みんなで写真撮ったの。ここの一角謎やねって。

東村:
なんか石田さんち、一番メインのリビングのテレビの上って、いろんな家ほらテレビの上って置物コーナーっていうかその家のスペックがわかる場所っていうか、ちょっと人形おいてあるとかたとえば家族写真がおいてあるとこあるじゃん。石田さんち、そこに蟹の甲羅の食べ終わって洗っておいたやつが飾ってあったんですよ。

石田:
なぜかおいてある蟹の甲羅。

東村:
飾りとして、食べ終わったズワイガニの甲羅を洗ったものがすっと置いてあるっていう…(笑)。

石田:
すっげーおいしかったから記念に。

東村:
いやー、ほんとにまじで、石田さんちはなんていうか、ほんとに東大阪のディズニーランドっていうか。夢の国っていうか。私にとって絶妙な面白さがあった。

石田:
それはよかった(笑)。

東村:
こんなこと言ったらほんとに怒られるけど、『進撃の巨人』の構想、石田さんの中では小学校くらいのときにあったからね(笑)。石田さんが、チョコレートのアポロとそれを人と見立てて、自分が巨人としてうえーって食べるっていうのをやってたって話を聞いてて、あたしは「進撃」はじまったときに、“あれ?これ石田さんが言ってたあれじゃあ…”ってマジ思ったから。

石田:
しかも、ちゃんと山になって、奴隷として働いてるやつらがいて…。

東村:
壁もあるのよちゃんと。

石田:
そう。その山を越えると…(笑)。あと、アポロを半分にわけて、残り半分は親世代と子世代にわけて、親世代が食べられるのを目の当たりにした子供たちが…(笑)。

東村:
だからもういっしょなんよ!いっしょなんよ!できてるんよ、「進撃」が。漫画に描かなかっただけで(笑)。

石田:
完璧な構想やったんだけど(笑)。

―ちなみに、石田さんが漫画にした作品(笑)に東村さんはどんな感想を持たれていましたか?

東村:
雑誌の中で異質だなと思っていて、「ぶ~け」のなかで、“変わった漫画を描く人だな、これ少女マンガなのかな?”とか思いながら大学生の時に読んでて、実際に会って、作品のまんまの人だったから、安心感があった。石田さんはなんで「ぶ~け」に投稿したの?

石田:
少女マンガを読んだことがなかったんだけど、マンガ描いていたら、「せっかくだし投稿してみたら?」と姉と父に言われまして。ちょっとその気になったけど、少年漫画は絶対ムリな気がして、少女マンガは、パターンをつかんだらいけるんじゃないかとなぜか思ってしまい…。そこで少女マンガの16ページくらいの作品をがーっていっぱい読んで、なんとなくこんな感じ?って思って、一番少女マンガっぽくなさそうな「ぶ~け」に送りました。逃げの姿勢(笑)。

東村:
すぐデビューしたんだっけ?

石田:
いや、そんときはまだ4席5席くらいで。それで調子に乗って。“いけるんじゃね?”ってなって。

東村:
思い出した!絵がうまくもなんともない、ただのクラスの友達に、背景とか描かせてるんですよ。で、ローマ字で、なんとかちゃんありがとー!とか描いてあって…。

石田:
うわー!!!

東村:
完全に、放課後ノリで描いてたよね、あなた。

―石田さんの投稿作品の評価はどうだったんですか?

石田:
≪会話にセンスがある。キャラにセンスがある≫以上でした。

東村:
でも、石田さんの漫画って、関西人なのに関西弁じゃないじゃないですか。わたしそれがすごい好き。じつは。関西人の人って、マンガにけっこう関西弁だしてくるじゃん。あれってすごいこっちが置いてきぼり感をくらうっていうか、でもなんか石田さんはそれがなくって、本人に会ったときに関西人だったからすごいびっくりしたんだけど。

石田:
関西弁は口語ではあるけど文語じゃない。だから、文語にすると嘘くさくなる。そのノリはぜったい再現できない。再現しちゃうととっても読みにくい。だから、向かない。エセ関西人キャラになっちゃうの。

東村:
あと、締切を手伝いに行ったときに、アシスタントのほうがなんかえらいっていう衝撃の現場。一番笑ったのが、アシスタントさんがトーンの60番をばーって貼って、はいって渡したら、先生があーちょっとちがうなーって思って、これちょっとイメージ違うなー貼りなおしてって言ったら、アシスタントが、「どしたん?」っていう、衝撃の現場をみて、で、なおさないっていう、で、先生自分で貼りなおすっていう。

―今もけっこうアシスタントさんに任せてますよね。仕事場にお邪魔してみて、背景だったり、トーンだったりを人に任すっていうのが、お二人とも特徴的だなーと思いました。他の少女マンガ家の方より指定をがっつりしないというか。

石田:
私はもう、任さざるを得ない状況だってことがあります。あとまあ、任せられる人が数人いるっていう。私、最終的に締切直前になるとあるアシさんのことのこと“先生”って呼んでるから。

東村:
なんか、石田さんのとこは、攻めと逃げでいうと逃げの作業なんですけど、うちは攻めの作業なんで(笑)、アシスタントの世界とか技をぶつけてみな?みたいな感じでまかせてる。時間に余裕があるから(笑)

石田:
すみません(笑)

東村:
今はどんな風に指示してるの?

石田:
「ここ花!」「ここはホワンとさせて!」みたいな(笑)

東村:
(笑)。ちょっと真面目な話をすると、最近、女の人も少年漫画とかを描くようになってますよね。うちのアシさんも少女マンガに投稿してる人が少なくなって、みんな男まんがの方にいってるんだけど、私は少女マンガの方が絶対上だと思ってるの。要するに、描き込みすぎだと思うんですよ、ふつうの青年誌って、いま。少女マンガって、描き込んでないけど感動もおっきいじゃないですか。漫画って、セリフと構図だから、背景なんていらないんですよ。だから、背景入りすぎてるとセリフに意識がいかない。あたしたちの白さは意味があるんだと。

石田:
通常会話のうしろまでびっちり背景はいってると、割とちがうよなと、わたしも思う。

東村:
もうね、わたしたちの感覚でいえば、電話を細かく描きこまなくても、腕まげて耳に当ててれば電話しているし、背景に一本線をいれれば壁と天井いう背景っていう。少女マンガって、そういう記号で見せれるところは見せて、ほかで語るスタイル。

石田:
木漏れ日も、しゃしゃって書いとけって思うんだけど、なんか幹まで描いてくれてて、ちがう、“ごめん、これちがう”ってなる…。

東村:
なんつーの、わたしの感覚だと、描けば描くほどどんどんどんどん画面が弱まっていく。たとえば山があって空があって、山も空もトーン貼るからさ、もうただのグレーになるわけじゃん。どっちか貼る、っていう世界なわけじゃん、いまの背景は。

石田:
あーわかる。

―石田さんのマンガは、実際は時間がないゆえの処理ってこともあるかもしれないですけど、トーンで語ってるなーと読んでいて思うこと多々ありますよ。


担当的に“トーンで語ってる”って思う名シーンであります。

石田:
トーンで語る(笑)。

東村:
ものすごいいい言い方(笑)。でも、それこそ記号で語るだよ!

石田:
ほんとね、あれは、少女マンガありがとうなんだよ。背景なくっておっつかない描写はトーンが請け負ってくれる。

東村:
無数にあるトーンから選んではっているわけだから、それも表現だわな、たしかに。

石田:
インのとこだけはちょっとこだわってます。

―現場で石田さんが「リリ」って呼んでいるトーンあるじゃないですか、あれは「リリカル」の略ですか?

石田:
そうです、「リリカル」。そういう印象のトーンを自分で勝手に分類して名づけました。

東村:
それ、うちでは「エビ」って言ってる。昔、『きせかえユカちゃん』描いてるときに、イセエビをぶわーってユカちゃんが食ってるシーンで、締切まで時間がなくて「そのイセエビなんか貼って!!!!!」って言って、誰かがそのトーン貼ったらすごいイセエビ感がでて。

石田:
それ言ってはったなあと思って、食べ物描写のときに貼ったらほんとによかった。

東村:
甲羅感がでるでしょ。

石田:
やるな「リリ」。

東村:
あと、石田さんのとこ、なんかトーンをけちってつなぐときの言い方を「バチスタ」っていってて、うちでもそういうようになった。「ちょっとそこバチっといて」みたいな。

石田:
流行ってるわ、すこし(笑)。まぁ、トーンの名づけは漫画家あるあるだね。

東村:
石田先生は、海月姫の「尼~ず」という言葉を考えた人だからね。センスあるんだよ。名づけることに。投稿作の評価と一緒だね。


“尼~ず”は言わずもがなですが『海月姫』で生まれた、
男を必要としない人生を邁進するオタク女子のことを指します。


―石田さんは、東村さんの作品のどういうところが魅力だと思ってますか?

石田:
ほんと、あんたの魅力ってどこに絞ればいいの?

東村:
“石田拓実しか分からない魅力”みたいなエピソードがほしいね!

石田:
うーんじゃあ、最初はぶっちゃけ、『ユカちゃん』でギャグいったときに、“え、なんで??”っていうのは思った。

東村:
そうそう。私がほんとはシリアスの漫画の人だったっていうのを分かってる数少ない戦友なので。

石田:
『海が見える街』とか、あそこらへんとか、すっごくよかったとおもうし。

東村:
わたしね、ああいうのを本当はかきたくて漫画家になったんだけど、とりあえず需要に応えてギャグになった部分ある。ギャグは、まあやってて楽しいからいいんだけど、ほんとはシリアスなのを描きたいっていうのはずっと思ってて、まあ、40超えたらやろうかなって思ってますけど。

石田:
でもそれでも、需要をきちんとこなしちゃうのが、ほんとすごいよなーって思う。まぁ、わたしも結局『ユカちゃん』もめっちゃすきやったけどね。みどりちゃんくそ可愛いし。

東村:
でも、“アキコはんにはいつかシリアスをかいてほしい”みたいなかんじでしょ、あなたは。

石田:
うん、『ドライアイス』が載った時“きたー!!”って思ったもん。

東村:
『ドライアイス』でシリアスなかんじの描いたとき、一条ゆかり先生に「なに暗い漫画かいてんの?」って飲み会で怒られるっていう大事件が発生したんだよ…。「YOUNG YOU」のパーティーで凄く怒られて「暗いのはダメよー」とか言われて、ほんとそうだなっておもって、それで、また封印するっていう。

石田:
「YOUNG YOU」にかいたシリーズは全部すきだった。短編も。

東村:
『ドライアイス』『ゑびす銀座天国』の主人公は石田さんが見た目はモデルなんですよ、完全に。天パの、髪もしゃもしゃみたいな。

石田:
わたしよりかわいいけどな。あとは、ネームがはやい、この人は。

東村:
息抜きだから、ネームは。下絵のときは、まあちょいしんどいなって思うけど、やっぱ集中しなきゃって思うけど、ネームはもうほんとに編み物やってるようなもんっていいますかね。ちょっと、マフラーでも編もうかな、今日十段くらい編もうかなみたいな感じの。

石田:
なんかの原稿手伝ってるときに、はあ、ちょっと休憩するわって言ってネームをやるっていう。しかも仕上げるっていう。すごすぎるんですよ、もう。

『東京タラレバ娘』の3巻にも登場している石田さんですが、この作品に関してはどう思われましたか?

石田:
『タラレバ』ねえ~、あれはほんと、すげえな。みんなうっすら思ってて、でも言えなかったことを、ぱーん!!って。

東村:
あれ、あえてやってくぜ!ってポジションの人が今、いそうでいないんだよね。だから、みんな「言った!」って思ってくれているのかなと。

石田:
野球のベンチの話とか、これすっげーわかる、これ何万人がわかる!って思ったことだろう。ほら、コンパとかはりきっていくと、全然無理だけど、その日いきなり頭合わせで呼ばれて、メイク直しもせず、きったないTシャツで行ったらなぜか収穫があったみたいなことがあると思うんですよ、その気負いが取れてからコロッとうまくいく話。『タラレバ』を読んだ女子がみんなそうなるといいな。


石田先生が挙げたシーンはこちら。
私も何人もの友人に“あのたとえ、すげー!”と体をぶんぶん揺さぶられました。


東村:
たしかに、たしかに。

石田:
気負いなく“あ、いっすわいっすわ、わたしこのまま生きてく!”ってなった途端にいろんなことはじまるみたいな。

―東村さんは石田さんがKissではじめられた連載『カカフカカ』はどう思われましたか?

東村:
まあ石田先生は時代がそろそろ追いついてくると思ってますよ。はやすぎたね、ちょっと。だいぶ早かった。ま、ぼちぼち追いついてくるでしょう、時代も。

石田:
はやすぎたか、だいぶ描いてるけど。

東村:
とにかく、私は石田さんの描くヘンテコな少女マンガが好きで、もっといろんな人に読んで欲しかったの。だから、私の結婚式で石田さんのことを好きなKissの編集さんと同じ部屋にした。そうしたら誘われて、たぶん描くなって思って勝手に部屋割りで石田拓実をプロデュースしたっていう。

石田:
で、その流れにのり、かきやしたーっていう。

東村:
てか、デビューしたところから外に出たのはじめてでしょ。どう?

石田:
クソ緊張した。そして、今もしてる。

東村:
でもはまってよかったよね。

石田:
はまってますか!?

東村:
はまってるよ、はまってる。あなたの生臭いところ、いいかんじに出てるよ『カカフカカ』。(←後輩なのに上からby東村)


設定も生臭く、ラブいシーンも生臭い。これが『カカフカカ』の魅力です。

石田:
「Kiss」はあんまり生臭い作品がないから、生臭いのいいかなって思って…。でも、そういってもらえてよかった。まぁほんとによう続けてこられたなあと自分で思います。

東村:
“古本屋やりたい、古本屋のばばあになりたい”って言ってたのにさ、よう続けてきましたよこの40歳までさ。

石田:
ねえー。

東村:
あと、皆さんに知ってほしいことは、石田さんが世界で一番漫画に詳しいですよ。誰よりも、読んでます。

石田:
最近広がりすぎて追いかけられないんだよ。10年前までは、だいたいのマンガ雑誌のことはわかる気がしますって言えたけど、今言えない!

東村:
ティーンズラブ界の最近の人ってすごくない? すごいうまい子いるよね。

石田:
TLは10年前から思ってた。すごい、宝の山や!みたいな。

東村:
びっくりするほどうまい。これが雑誌のってたら、100億%アンケート一位でしょって人がごろごろいるじゃん。だからじゃどうするかっていう、ね、現状雑誌で連載しているの作家はっていう。だってTLって少女マンガもより、エロいっていうだけでかなりまあ変わらないわけじゃん、気持ちの表現に関しては。だからさあ、かなわないよね。TLはもう、おもしろすぎて、私もすごい課金されてる。

石田:
エロというエンタメを引き受ける力っていうか、むしろ、けつまくって楽しませてきてる作家のポテンシャルがすごいもん。自己満足マンガじゃない。

東村:
しかも短くきざんで、課金してかなきゃいけないから、20ページに一回がっつり見せ場を、しかも精神的な流れも入れて作るという、ドプロだもんなあ、ほんとに。見習わないと。いやあーおそろしい時代になったなあ、ほんとに。

―石田さんがいっぱいマンガを読んでるなかで、これから漫画の世界ってこういう感じになってくんじゃねえのかな?みたいなのってありますか?

東村:
石田さんはいつも言ってるよね、何十年かたつと漫画は、能とか浄瑠璃とかといっしょで、漫画は一部の人が嗜む娯楽になるのではって。

石田:
金払う人が払うっていう。ただネットがでてきてちょっと変わってきたよな、それも。本の漫画はそうなるかもしれんけど、逆にネットの漫画はもっと軽くて読みやすい。画面の密度も薄くして。

東村:
そうだね、結局ウェブになってきたらさあ、トーン文化がさあ、どうなるのって話になってくるじゃん。なんかもう、トーンいらないじゃん。薄墨でいいじゃん。オールオフセットなわけだからさあ。そうなったときに、少女まんがトーン文化が…石田先生!ラストトーン世代になっちゃうよ…。

石田:
じゃあラストトーン職人として…、一ページにセリフいっことトーンっていうマンがを貫いてみせる!

東村:
わたしは、ここから5年は絶対、映画とかドラマになるな、っていうのをやるっていうのを心に留めてる。

石田:
おおおおー!

東村:
多くの人にうけるって意味では、メディアミックスをあからさまに狙ったやつをやるっていう思想も、いまは大切な気がしてる。あとは、物語のもとを作る人になる喜びを感じる職業でありたい、マンガ家というものはという風にも思ってる。まぁ、とりあえず、45歳までは、今のペースでがんばりましょうか。お互いね。私は石田さんが売れたら京都で芸者遊びを一緒にする、おごってもらうという約束をしてて…。

石田:
それ売れた人がおごる約束やったような。もう、あなた売れているでしょうが。おごりなさいな。

東村:
やってもいいんですけどー。まあ、世間が石田拓実を求めるだろうっていう、のだけは断言させてもらいたいな。なので、まだ、おごらない。

石田:
どっちの層が求めてくれてるんやろうか。

東村:
変態の層。だから、電子の時代がきて、より売れると思いますよ。この人の変な少女マンガは。少女マンガっていうのはそもそも精神論なんだけど、石田さんはそこより先になんか肉体的なものがある。ひっくりかえっちゃってるわけ。まさに『カカフカカ』も先にエロがあるよね。


『カカフカカ』1話目から肉体的なもの、先にきてます!

石田:
精神論と肉体論は別々に論じることはできませんぞ。

東村:
少女マンガの基本の構造からひっくりかえっちゃってるのに、きちんと少女マンガ家って人はまあいないですよ。石田さんの名言として、「人間はただの一本の管だ」っていうのがあって、そんな少女マンガ家がいますか? 一本の管同士の生物が、どう愛し合うかというのを描く稀有な作家、唯一無二ですよ、これは。

石田:
じゃあ、思い切って、自分では自信ないですけど…。えー、わたくし、まだできあがってません!!伸びしろはあります!!

東村:
そうだ!石田拓実には伸びしろがある! 20年やってるけど、映画『タイタニック』でいうとまだディカプリオがトランプやってるシーンだから。石田さんには誰も描いたことのないこと、みんなが考えてなかったことを、そこか!みたいにマンガで出せる人。まあ、何年も後輩の私がいうのもなんですけど(笑)。のびしろあるうえに、やっと時代が追いついてきてる。やっと時代が、石田さんの天パの後ろ髪にかすってきてる。だから、頑張って描いてください、これからもいっぱい。締切やばいときは手伝いに行きますんで、先生。あたしは締切、きっちりはやめにおわるんで(笑)。

石田:
もう、わたしいっくらでも、東村アキコにあやかるんだ。

東村:
モブ全部いれますんで!

石田:
あっ、そうだ、最後にお願い。あの、ツイッターで見つけたら私の宣伝ツイート、リツイートしといて。アキコはん、フォロワー多いから助かるんやわ!

東村:
こんだけ、色々話してさいごの一言、それかい!(笑)

石田:
あやかるから(笑)。