『東京アリス』完結&新連載『月と指先の間』スタート記念
稚野鳥子ロングインタビュー
Kiss LIVE!

―Kiss10月号(8月25日発売)で『東京アリス』が最終回…ということで、おつかれさまでした。感動的なラストでしたね! 緻密に最後まで計算して描かれているように感じる素晴らしいラストでした。

稚野:
アリス』がこんなに長く続くと思っていませんでした。なので、今、描き上げた感がすごくあるんですよ。ふう、理央、みずほ、円城寺の4人が違う道を歩みながらも幸せになって、また新しい物語がはじまっていくような終わり方になったので、未来に繋がる物語になったと思います。
私は作品が完結したときに「これで終わり、読み返さなくていいよ」っていう感じじゃなくて、「もう一回はじめから読み返したい!」って読者の方が思うような終わりが理想だと思っているんですが、『アリス』はそういう風には終われたんじゃないかなと。


―最終回は初期から決めていらっしゃったんですか?

稚野:
連載の途中からイメージが固まってきた感じですかね。
初期は、まず、恋愛ものにしようとか、友情ものにしようとか考えてなくて。とにかく買い物が好きな子のお話をしようってことだけだったんです。私はいつもそうなんですが、最初は考えてないんですよ。先のこととかは。
あとは、個人的に複数で喋っているシーンを描くのが好きだから、登場人物を仲のいい4人の女の子にして、群像劇みたいな感じで自由に描いてみたかったんですね。

そこからは、20代~30代の世代の人たちがシェアハウスを好んでしていて、夫婦+αでシェアハウスとかもあるんだよーみたいな話を聞いて、舞台にした代官山ってシェアハウスするには最適の場所じゃない?と思い、4人にシェアハウスをさせてみたり、その時々に感じたことや、知った情報を入れていきながら作ってきました。


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1巻3p、4p
東京アリス』の主人公・ふうは買い物にすべてのエネルギーを注入してしまい
恋愛機能が低下している女子

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1巻p164、165p
シェアハウスのスタートシーン!

―本当にリアルな女子の憧れや生活が描かれているところが『東京アリス』の魅力だと思います。

稚野:
自分で選んだ群像劇形式なんですけどやっぱり4人で喋ってるところは大変なんですよ(笑)。会話の内容はもちろん、ファッションとか髪型とか、着てるものとかもそれぞれの好みにちゃんと描くのは結構大変なんです。でも、読者の方はそういうところをちゃんと見てるし、楽しみにしてくださっているので、きちんと描こうっていつも思っています。カラー原稿を描く時には、ふうのリップの色はピンク系で、円城寺はコーラル系と1人ずつある程度決まってるんですよ。
最終回でも、ファッションにまつわる重要なシーンが出てくるんですが、これまでの4人のエピソードをつなげるモチーフをいれつつ、自分でもこんな感じのがかわいいかなと思うものを描いたら、なんだかとても細かくなっちゃって、すっごい時間がかかりました(笑)。


1巻p175 1巻p174

1巻174、175p
リアルなお買いものシーンには「女の子のハッピーと欲望」がつめこまれてます!

―本当に細かいところまで描かれていて感動しました…。ぜひ、読者の皆さんにはお読みいただきたいです。そして、『東京アリス』は男子もみんな魅力的ですよね。

稚野:
奥薗さんがもちろん、一番人気あったと思うんですけど、東雲くんが、編集部で人気だと聞きましたよ、わたし(笑)。

―そう!! 東雲くん! 優しい! 最高です!(興奮) 働く女子にとって最高のカレですよね!

稚野:
そうなんですよ!!!毎日戦って疲れてる女にツンデレはいらないですよ。デレだけでいいんですよ!!(稚野さんも興奮)だから、人気あるんだと思います。ひたすらデレだから。

―でも、はじめ「アイスマン」とかあだ名つけられてた、奥薗さんも実は素晴らしくって、ふうの部屋がめちゃくちゃでも何も言わないじゃないですか!(興奮)

稚野:
なんか天然なんですよね、実は!!
だからジブリおたくのふうがジブリモチーフのジオラマチョコという意味不明なものをつくっても、その説明を一応、聞いてくれるし、ふうのこと好きだと自覚したら、ジブリのことも勉強してくれるし、あんなにかっこいい男のくせに、普通にふうに片思いしてるじゃないですか。そのギャップというかピュアさが、奥薗さんの魅力だし、人気のもとなんだろうなって読者の方の反応をみていて思いました。
ふうが「なんでそんなにいろいろ言うんですか!」って感じのことを言ったときに、奥園さんが「おまえが好きだからだよっ」って言っちゃうとこが「アリス」の奥薗さんの魅力爆発の第一の山ですかね。大の男が思わず言っちゃって、その場で逃げられ、更に避けられちゃうみたいな(笑)。


3巻p161 3巻p160

3巻160、161p
このシーンです!

―すっごいイケメンのくせに…ふつーの、いや、むしろちょっとヘンテコなふうが好きっていうのがいいですよねー。

稚野:
ふうは、ほっとけない感じの女の子ですよね。こういう設定って割とベタだなあって思うんですけど、読者の方はそうのがやっぱり読みたいと思ってくださってるならば、私も描きます!描きたい!という気持ちです。
奥薗さんがふうに最後のプロポーズするとことかも、ベタかなあって思ったんですけど、「この回を巻頭にしてよかったよー」って編集長が言ってたと聞いて、やっぱこういうシーン大事!と思いました。

私、実をいうと、そんなにストレートに恋愛をテーマに描く漫画家になるつもりはなかったんです。こういうマンガを描く人が結局あんまりいないからやめないでくれって何回も言われる機会があったんですよ。実際、今の少女マンガ、特に大人向けの世界で、ストレートに恋愛っていうのはあんまりないじゃないですか。軸はもちろん恋愛だけど、何かキーワードや、特別な舞台が絡んでいることが多い。だから、その中で、私がこうやって描いているのは今や、特殊とも言われる風潮ですらある気がします(笑)。でも、それを求めてくれる読者さんがいるなら、ストレートな恋愛ものの魅力で楽しんでほしいとも思う。そういう気持ちで『アリス』は描きました。


―ストレートっていうのは、単にロマンチックなシーンを連ねるということだけじゃなく、恋愛にまつわる感情をすっごくリアルに描くっていう側面もあると思います。そのリアルな感情っていうのは稚野さん自身どこから生まれていると思われますか?

稚野:
そうですね、時代とかもあると思うんですけど、私自身がその年じゃないと描けないものを描いてきたと思っています。『アリス』を始めたのが10年前なんですけれど、仮に、じゃあ今からこの連載をはじめましょうっていうことになっていたとしたら、描けるとは思うんですけど、やっぱり違うものになってしまうんですよ。円城寺のあのエロいシーンとか今だったら描くエネルギーないなあって思ったり(笑)。
あと、恋愛に限らずですけど、昔の嫌な思い出とかも、何年か経つとそろそろ作品に昇華できるなって時がきますよね。それをこの4人の物語にアレンジして入れ込んだりもしていました。だからその時その時の自分しか描けないものを描いているので、リアルっていうのは、本当にこういうことがありましたってことじゃないんですけど、私の感じたもののリアルが結構入っているんだと思います。
新しい作品もたぶん、過去の私が描けって言われても描けないけど、今だったら描けるっていう話になると思ってます。


―新連載は、主人公が結構年上のマンガ家という設定だとお聞きしました。少女マンガでかなり珍しい年齢設定かと思いますが…。

稚野:
そうなんですよ。一応、主人公は50代にしようと思っています。でも、最近のそのくらいの年齢の人でもおしゃれで小奇麗で若い人多くないですか?
着想のきっかけは、アシさんと原稿中におもむろに、「中年の男の匂いがかぎたいよね」とか言ってて(笑)。若い男じゃ癒されないんですよ(笑)。さっきの東雲くんの話にもつながりますが、ツンデレとかもいらない。じゃあ、その求めているものって何なのかなーって考えてみたことがひとつ。
あと、今、アラサー女子で結婚に焦っている云々の人たちって希望を持ってるんですよね。希望があるから、焦ってる。じゃあ結婚できなくて、40超えて、50歳になっちゃうとどうなるのって話になるわけですよ。
でも、私の周りには50代で独身で楽しく暮らしてる人が結構いるわけです。50代になったからこそ、恋愛するときに、結婚や出産にとらわれなくてもいい自由さもあると。だから若い人たちが読んだときに、あんまり将来を不安に思いすぎなくてもいいよっていうマンガを描いてみようと思って。でも、まぁ、心の奥底では寂しさもあったりするから、そこはちゃんと描きますけど。


―なるほど。ちなみに主人公をマンガ家にしたのにはどんな理由が?

稚野:
バクマン。』や『アオイホノオ』ってマンガ業界の話ですけど、その女版って無いな~と。無いなら私が描いてみようかなーと思ったのも新作の発想のきっかけでした。ただ、男性マンガ家さんよりきっと女性マンガ家さんの方が編集と付き合ったり、同業と付き合ったり、ライバル関係で友人が減ったり、そういう人間関係のドラマが多いんじゃないかなという気がして、あくまで想像ですけど(ニヤリ)。
尚かつ、なんかふわっとした人たちが、ふわっと恋愛の話を描いてるというイメージの少女マンガ界の本当の姿、現実を知ってもらいたいですね、あくまでフィクションですけど(ニヤリ)。


―楽しみです! 最後に、新連載開始に向けて読者の皆さんに抱負をお願いします。

稚野:
強迫観念っていうか、絶対結婚しないとダメとか、そういう価値観がやっぱり根深くありますよね。でも、ヨーロッパの人とかって年齢に左右されないんですよ。フランスとかイギリスだと、70、80になるとさすがにおばあちゃん扱いだけど、それまでは全部マダムっていうか。ファッション誌も全然年齢別じゃないし。日本って、10代向け、20代向けってすごく分かれてて、それはいいところもすごくあると思います。でもどんどんどんどんその細分化が進んでってるような気がして、それに自らもラべリングに参加してしまっている。50代すぎると急におばちゃんっぽくなったりするのは、自分が何を着たいじゃなくて、周りにどう思われるとか、そういうのを気にしてしまうからなんだと思います。だから、好きな服を好きに着ればいいじゃん的な、今までにない女性の生き方の提案になればいいなと思っています。
タイトルは『月と指先の間』。Kiss11月号(9月25日発売)からスタートします。
ぜひ、読んでいただければ嬉しいです。


『月と指先の間』
新連載『月と指先の間』Kiss11月号(9/25発売)よりスタート!!

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