オトナ女子マンガ部! ―あのマンガについてもっと話そう―
第3回 虹色のストーリーテラー こやまゆかり作品を読む の巻
Kiss LIVE!

「オトナ女子マンガ部!」とは……
1992年に創刊した「Kiss」。
23年の年月の中でいろんなマンガが連載されてきました。
とかく新刊ばかりが注目されがちな世の中ですが、≪名作は新作のみに非ず!≫
Kissで発表された作品がびっしり並ぶ、講談社のKissの書庫から、
編集スケ(在籍9年目)ツチ(在籍1年)
お届けするマンガ談義「オトナ女子マンガ部!」
今回はこまやゆかり先生の担当編集ノリさんを迎え、おしゃべりスタート!



【こやまマンガの泡!】
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ノリ
電子化もされている『最後の電話』という読み切り傑作選の中にこやまさんのデビュー作『プリテンダー』が収録されているですけど、投稿して一発でデビューです。

ツチ
おぉ、一発でデビュー!すごい!

ノリ
当時、こやまさんは就職していらして、昼間は働いて、夜にマンガを描いて投稿されてたんですよ。

スケ
『プリテンダー』の主人公は社会人で、学生時代のもう失ってしまった恋と、いま目の前にある社会人との恋の感じが違うのに戸惑ってますよね。この自分が属している世界が違ってくる感じは、こやまさんが社会人になってからデビューしたのも影響しているのかもですね。

最後の電話     プリテンダー
   
デビュー作品は1988年に掲載されました

ノリ
こやまさんのお父さんは「なんか東京の出版社から電話あったけど、お前、絶対だまされてる!」っておっしゃっていたらしく、心配した当時の担当が関西まで会いに行って無事にデビューできたという。

ツチ
当時の担当さんが、Kissを代表する作家さんの未来をつないだんですね…!

スケ
あっ、この作品の中でも「こやまさんの泡」がある!

ツチ
「こやまさんの泡」

スケ
こやまさんのマンガで、≪幸せな瞬間≫とか≪穏やかな空気≫のときに、背景に白い丸が飛んでるじゃないですか、これを私は勝手に「こやまさんの泡」って呼んでます(笑)。

こやまさんの泡
   
これが「こやまさんの泡」です!!(スケ)

ノリ
この雪みたいなやつですよね。こやまさんは「浮遊物」と呼んでいるそうです。こやまさんはそのページの空気感をすごく大切にされていて、スケさんが言ったようにポジティブで柔らかい空気を出したいときに使っていらっしゃるそうです。

ツチ
あまりに自然なので意識していなかったけれど、そう言われるとそういうシーンは必ず「こやまさんの泡」が!

ノリ
独自の表現方法ですが、すっごいなじんでますよね。


【こやまさんのライフステージと作品たち】
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ノリ
デビュー直後から、ずっと作品をコンスタントに発表し続けているこやまさんですが、担当として独断でその中から代表作を並べるとするとこんな感じでしょうか。

『あなたにホの字』
『スイート10』
『×一物語』
『1/2の林檎』
『バラ色の聖戦』


あなたにホの字 スイート10 ×一物語 1/2の林檎 バラ色の聖戦

ツチ
『あなたにホの字』は結婚生活の話、『スイート10』は不倫の話、『×一物語』は離婚の話。読んでいると、主人公は違うけれど、なんだか女性のライフステージの変化を追っている気持ちになりますね。

ノリ
こやまさんのライスステージそのものというわけではないけれど、『あなたにホの字』はご結婚される前後の作品なので、ご自身のライフスタイルの変化を作品に重ねているんだと思います。

スケ
なるほど。周りにもそういうかんじで変化している人が多かったのかもですね。

ノリ
確かに、こやまさんはすっごく取材熱心で、“メモ魔”です。『バラ色の聖戦』で一緒に取材に行った時も、すごく細かいところまで鋭く質問されていました。きっと、周りの人のライフステージの変化の話が、その代表作のテーマの流れを作っていったというのは大いにあると思います。

スケ
取材を大切にされる作家さんって、ご自身の感情だけを投影しないからキャラクターが多彩な印象。

ツチ
こやまさんの作品もいろんなタイプの女子が出てきますもんね。取材、大事だー!


『スイート10』は編集部から反対された作品だった】
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スケ
『スイート10』は不倫がテーマで、2008年には昼ドラにもなりましたね。

ノリ
連載を始めるとき、実は編集部から反対されたというか、「不倫をする女性の話に女性読者は共感するだろうか」と論議になったらしいです。

ツチ
確かになかなか難しい問題ですね。

ノリ
その時も、こやまさんは周りの人を取材していて「実際に不倫しているか否かは別として、そういう願望はある」ということに確信を持っていたそうです。「そこまでの決意なら、やりましょう!」という話になって、実際に1話目を掲載したら大反響。もちろん、賛否両論の大反響ですけど。

スケ
私は、この主人公の弓子に子供がいる設定にしたのが、踏み込んでいるなーと思いました。賛否両論の的になりえる設定でもあるけれど、恋人から夫婦、そして、パパとママになったのと恋愛の距離感っていうのが子供がいるからこそ出ているんです!

ツチ
≪夫も、子供も、恋も欲しい≫っていうスタンスがずるいよ!とは思いつつも、弓子自身もそのずるさをしっかり認識しているから責めたてられない、そこも絶妙。

ノリ
不倫のロマンチックなシーンもあるけれど、夫婦になるとはなにかっていうことがちゃんと描かれていますよね。【毎日一緒にいると男女でなくなる】とか、【夫婦なんだから言わなくてわかるなんて大間違い】とか【結婚しているということでどれだけの人間関係と承認関係が生まれているか実感する】とか、胸にしみる真実が、満載。

スイート10
   
結婚とかなにか、夫婦とはなにか、がこのページにつまってます!

スケ
最後、弓子にどんな選択をさせるのか、もし自分が担当させてもらっていたらと考えると相当打ち合わせでどう発言するか悩む気がしました。

ノリ
どういう選択をしたかはぜひ、作品を読んでいただきたいですが、当初は違うラストを考えていらっしゃったそうです。賛否両論の読者さんの感想をもらいながら、弓子の答えをつくっていったのかもですね。

ツチ
あと、「次どうなるの?」感がすごくあって、一気に読みました、私。

ノリ
僕も、この作品から今のこやまさんの作風である「次が気になる」が強くなっているなーと思いました。うまくいっているシーンがあると、大抵やばいことが起きるので幸せシーンの象徴「こやまさんの泡」が出てきたら展開に要注意ですよ(笑)!

スケ
当時Kissって月2回刊だったじゃないですか。月刊誌より次の号が読めるまでが短いからこういう展開のさせ方でも「次、まだ??」ってならなかったと思うので、刊行形態も実は関係あるかもですね。


【プラスアルファの力】
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スケ
私が編集部に配属された当時は『1/2の林檎』を連載されていて、私が読者ハガキの整理の担当だったんですが「奈津子、許さない!」っていうメッセージ、本当に多かったです。

ノリ
僕もこの作品から担当させてもらったんですが、ポジティブな主人公・ひかるの順調な恋をひたすら自分の欲望だけで邪魔してくる、奈津子への憎しみがすごかったです。

ツチ
京都駅の吹き抜けをつかった幸せと不幸せの対比、ラベンダーでの流産疑惑など、エピソードが具体的かつ印象的。編集としてとても勉強になりました!

ノリ
エピソードといえば、その「奈津子憎し!」が高まっているときに、これはあっさりと奈津子が去ったとしてもこれまでの悪行を読者は許してくれないだろうなと思い、ある過激なシーンを提案したんですよ。

スケ
もしかして、屋上での自殺未遂シーンですか?

ノリ
そう、そこ! その時に、自分が提案したのは「屋上に立たせて罰しましょう」ということだったんですが、こやまさんがそれを受けて作ってきたエピソードは、予想の遥か上を行く感じで、本当に驚きました。でも、そのエピソードを入れたことで、そのあとに奈津子という人物について深く描きこめることになり、結果として人間性の変化にもつながった。提案を受け入れつつ、プラスアルファを返してくる、こやまさんの作家力を痛感した出来事でした。

1/2の林檎
   
12巻の衝撃シーン、続きはぜひ単行本で!

ツチ
…ちなみに、こやまさんはどの主人公に似たタイプですか(ドキドキ)?

ノリ
(笑)。完全に主人公タイプ。奈津子みたいな悪い人じゃないです。すっごい素直で快活な方なので「理解できない人に出会う」→「なんでそう考えるの?と疑問に思う」→「考察してキャラクターに仕上げる」という手法で悪い人を生み出しているんだと思います。


【こやま作品の原点】
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ツチ
最新作で、Kissに連載中の作品『バラ色の聖戦』でも、モデル業にチャレンジしようとする主人公・真琴に全然協力しない夫・敦への批判は多かったですね。

スケ
私も既婚者として、超むかむかしながら読んでます。「女は黙って家のことしてればいいんだよ」って何様じゃーって!

ノリ
最近は、そんな敦にも価値観を変えざるを得ないピンチが訪れてますけどね。女性と話すと必ずそこはひっかかるポイントで、みんな熱く意見をくださいます。

ツチ
私、一番はじめに話に出た『最後の電話』に収録されている『女友達代表』にその原点を見た気がしました。

スケ
確かに!夫に働きに出ることをここでも当たり前のように反対されて、「結婚したら― 女と男に従うしかないんだろうか」ってモノローグが入るシーンはまさにテーマ一緒ですね。

バラ色の聖戦・女友達
   
女の生き方について考える、これがこやま作品の原点です!

ノリ
こやまさんと話していると「自分の人生を、人に依存しない」ということを大切にされているのだなーと感じますね。そう思うと、敦と離婚して、シングルマザーで四苦八苦しながらも自分で人生を切り開こうとする『バラ色の聖戦』の真琴はまさに、こやま作品のヒロイン!

スケ
仕事の間、子供を自分の親に預ける時に、親は応援してはくれるけど、自分とジェネレーションが違うから「そんなに働かなくても」みたいな感情も持たれてしまっているシーン読んで、私も働くママとして≪わかるー!!!≫と叫びたかった。気持ちの中で四苦八苦しているだけじゃなくて、真琴がちゃんとママとして四苦八苦しているから共感できるんですよね。

ツチ
超華やかな世界に足を突っ込んでいる真琴だけど、完全にこっち側(一般人)の人間ですよね、真琴。

ノリ
こやまさんも、妻であり、母であり、自分の親の娘ある人生を歩んできて、そのリアリティを大切にされてきたから、自然と共感度の高いエピソードでお話が構成されていくんだと思います。「自分は作家だ!という感覚ない、自分は一般人」とよくおっしゃってるし。

スケ
確かに共感って、そういうことのなのかも。

ノリ
とはいいつつ、常に向上心に満ち溢れていて、『バラ色の聖戦』でご自身が全然しらないモデルの世界のチャレンジしたり、ハツキスで連載中の『ポワソン~寵姫ポンパドゥールの生涯』(作画:霜月かよ子)、マンガボックスで連載中の『ホリディラブ~夫婦間恋愛~』(作画:草壁エリザ)では原作者として作品を発表されているので、そちらもぜひご覧いただきたいですね。

ポワソン     ホリデイラブ

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『バラ色の聖戦』はKissで大好評連載中!
『ポワソン』はハツキスで大好評連載中!
『ホリデイラブ』はマンガボックスで大好評連載中!

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