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─読むと恋をする─

35
結果発表!
デビューが1作品、TOP賞が1作品、期待賞が5作品と、非常にハイレベルな回になりました。
また、入賞作品の内容もバラエティ豊かでした。
KissWAVEでは、あらゆるジャンルの女性向け漫画の投稿をお待ちしています!

アンラッキーガール

中村はな

30歳(埼玉県・32P)

『Kiss』2019年11月号に掲載決定!

作品あらすじ

今までの人生17年間、全くといっていいほどツイていなかった女子高生・鈴(すず)。今日もジャンケンに負けて図書室の整理をする羽目に。そこに、教室で前の席に座る同級生・大野(おおの)君がやってきて、手伝ってくれるという。放課後、図書室で何日か一緒に過ごすうちに、無表情だと思っていた彼の意外な笑顔を見てしまった鈴は…。

講 評

Kiss編集長

おめでとうございます。中村さんはいつも少し変わった設定の作品を投稿されていて、投稿するたびに画力も構成力も上がってきた方という印象です。ただ今回は、変わった設定ではない中でしっかりと主人公の心情を描き、相手役でもある男の子を魅力的に描いている点が評価されました。ついていないと言いながら、しっかりと地に足つけて前向きに明るく生活する主人公の姿は、中村さんの堅実な投稿歴にも重なって嫌みなく感じられました。今後も独自の視点は大切にしつつ、平凡な設定の中でその視点を生かしていく作品づくりのほうが中村さんらしさが発揮できるように思います。頑張ってください。


ももち麗子さん(第35回Kiss WAVE審査員)

じゃんけん、私も弱いので、主人公が一発で簡単に負けてしまう物語の始まりにまず共感。9ページ目の、前の席の大野くんの後ろ姿の絵がすごく良くて目にとまりました。彼の笑顔の絵もそう、作者がカメラをまわして撮った画ではなく、主人公の眼に映る風景を原稿に描いている。何かを見て、あ、と、心動かされた瞬間にカメラのシャッターが押されて、それを一枚の絵におこせる人なのだなと感心しました。主人公のコロコロ変わる表情も魅力的。読後感も心地が良くて、記憶の奥底に埋もれていた『あの頃』の感情がふっと掘り起こされるような…中村さんの秘密の宝箱の中を覗き見てしまったような気持ちになりましたよ。デビューおめでとうございます。共に頑張りましょう!




ノン・リワインド

当麻ゆいこ

33歳(群馬県・37P)

作品あらすじ

映画館で働く千歳(ちとせ)には、10歳の頃からの友達・マミがいる。何でもできるマミに昔から憧れていた千歳は、映画監督になるというマミの夢に影響されて今の仕事を選んだほど。でも、15年続いた友達関係も、最近は会う度に違和感を感じるようになっていた。昔の夢など忘れたマミは主婦業が大変そうで、話もだんだん合わなくなり…。

講 評

憧れていた友達が変わっていく、そして友情が変質・崩壊していく、そのことへの感情が痛切に伝わってくる作品でした。登場人物のディティールもリアルで、絵や演出も丁寧です。ただ、そのネガティブな感情を丁寧に描くあまり、物語としての出口というか、読後の解放感に欠けていたかもしれません。主人公が失われた友情を乗り越えて進もうとしている未来を、「仕方ない選択」としてでなく、もっと肯定的に描いてほしかったです。

コミックDAYSで無料公開中! 作品のご感想をお聞かせください!!

もじもじ

文月アズサ

31歳(愛知県・26P)

作品あらすじ

父母がいつも喧嘩をしていて、夜に目覚めてしまうまなみ。その現実から逃れるため、布団の中での淫らな想像と自慰が習慣化していた。通っている中学校でもそのことは誰にも言えず、親への不満も心に秘めたままで、まなみは高校生になる。親の離婚が決まるなか、彼氏ができて初めての性行為を経験したまなみだったが…。

講 評

性欲と、親との関係の不具合を絡めて描く視点がまず良かったです。また、性的な物事に対する思春期の少女の興味や期待、不安定さや曖昧さが、瑞々しく描き出されていました。その表現力は素晴らしいと思います。話としては、最も大きなテーマだったはずの母親との関係が未消化なまま終わってしまった印象があります。諸々の問題をひっくるめて「大切なことは何ひとつ言えなかった」というまとめは、やや乱暴で安易にも見えました。

CAGE

狙井

21歳(北海道・32P)

作品あらすじ

求職中の23歳・海子はある日、怪しげなアルバイト募集の張り紙を見つける。業務内容は全く不明ながら、異常なほどの好待遇に惹かれて面接に行った海子は、ろくに話も聞かれずに採用される。仕事は大きな屋敷に住む依頼主の17歳の息子を「部屋から出ないように監視する」こと。その彼・双葉は、イケメンで可愛げもあり…。

講 評

漫画的でともすれば現実感の薄い設定の話を、ぐいぐい読ませてくれる作品でした。それは登場人物同士の掛け合いの面白さや、テンポがいい描きっぷりによるものだと思います。主人公も監禁されている少年も、興味をもって読めるキャラクターでした。ただ、主人公が少年に与える影響や、少年の監禁の理由、そして物語の結末など、物足りない部分も多く見受けられました。漫画的な表現力はそのままに、より深みのある話を目指してください。

まだ青い私たちは…

鈴木きい

28歳(栃木県・32P)

作品あらすじ

いつも一緒に下校している幼馴染みの慎(しん)ちゃんから告白されたアズ。その気持ちは嬉しく思うし、彼を愛しくも感じるのだが、アズにはずっと好きな人がいる。その人は教師で、近く結婚するという。叶わない想いを抱きつつ、「保険」のように慎ちゃんに思わせぶりな態度を続けている自分が、本当に嫌になるのだけれど…。

講 評

タイトル通りの「青さ」を等身大でしっかりと描けていた印象です。本命への想いを抱えつつ、自分に好意を寄せてくれる人をキープしてしまうという、率直でリアルな恋愛模様が、瑞々しい罪悪感も交えて上手く表現されていました。ただ、最後が幼馴染みの男の子の視点で終わってしまうのが、意図がよくわかりませんでした。話が途中で打ち切られたようにも感じましたし、主人公への救いを中途半端に与えてしまっているように見えます。

雪が降るまでに

にれはら夢じ

36歳(愛知県・40P)

作品あらすじ

高校時代、お互いに「最悪なクリスマス」を迎えていた日に出会い、そして今ではルームシェアしている佳(けい)と夏芽(なつめ)。いつも男関係でモメてばかりいる恋多き夏芽を、呆れながらも受け入れている佳。そんな夏芽が、今回こそは本気の恋に落ちたようで、安心していた佳。しかし、クリスマスの夜、夏芽が嘘をついていたことを知り…。

講 評

丁寧に作られていて非常に読みやすく、二人の女性の関係性も面白かったです。ただ、その読みやすさが一方で語り口の平板さにもつながっていて、少し展開にメリハリを感じなかった面もあります。たくさんのエピソードが詰め込まれているのですが、どの話で最も読者の感情を動かしたいのか、焦点を絞って描いてもらえたら、より良くなったのではないかと思います。そこで登場人物の感情の大きな変化も描けるとさらに理想的です。

くたびれみち子の貧乏生活

白鳥絵美子

27歳(北海道・40P)

作品あらすじ

1年前、37歳で10歳下の義男(よしお)と結婚したみち子。慎ましくも満足な暮らしを送っていたが、実は義男が大きな借金を抱えていたことがわかる。そこからみち子の苦難の日々が始まった。借金に悪びれない夫、厳しい倹約生活、3つもかけもちする仕事…。そんな中、みち子は子供を授かり、さらに生活は困窮していくことに…。

講 評

お話として読ませる力のある作品でした。細部や人物描写にリアリティがあり、ラストの解決方法も現実感がありました。ただ、絵的にもコマ割り的にも終始テンションが高い感じで、読んで一息つくようなところや、笑えるようなシーンも少なく、少し怖さを感じてしまうような面も。物語を作り出す力はあると思いますので、後はそれを作品として多くの人に読ませるために、どんな読者へのサービスを盛り込んでいくかではないでしょうか。


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第37回(9月15日消印有効)審査員:東村アキコさん
応募のきまり─募集要項─

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