夜に飛ぶ花

帳 陽菜

26歳（岡山県・39P）

作品あらすじ

ドラッグストアに勤める高木由梨子（たかぎゆりこ）は、仕事のストレスを夜の公園でお酒を飲むことで発散する日々を送る。そんなある日、公園のブランコから特大ジャンプを決めてケガをしたところを、男子小学生・吉良（きら）くんに助けられる。店長のあたりの強さや、同僚女性スタッフ達の陰口と、職場での人間関係に悩んでいる由梨子だったが、吉良くんとの何気ない日常のやりとりに、心を癒やされて……? 言いたいことがなかなか言えない、 悩みを抱えた社会人女子と大人びた男子小学生の、歳の差友情ストーリー。

良かった点

全体的に「丁寧に描こう」という意思をとて も感じる原稿で、読者を意識して描いてくださっていることに好感を持ちました。主人公の名前のつかない感情やモヤモヤした不安や停滞する感情を、表情、モノローグ、 仕草、コマの重なりなど、様々な形で表現し、丁寧に掬いとりながら描いているところも達者だなと感じました。構成としてもまとまっており、吉良君の小学生ながらの優しさ、純粋さ、そしてラストの少年とも青年ともいえない成長した印 象的な姿や表情と、印象的なシーンもありました。やりきれなさを抱える主人公と吉良くんの、歳の差のある友情関係も心地よく、人間関係での不安を抱えた主人公が、一歩踏み出し、変わろうとしていく姿をラストに見ることができたことも、読後感のよさに繋がっているように思います。

ポイント

「帳さんの武器はここである」という突出した何かを、作品にどうやって投影していくのかが、今後の課題です。絵柄、エピソード、感情、モノローグ、どれか 1つでもいいので、読者の心に強烈に印象に残るものがあること。それが、デビュー、そしてその後の作品をプロとして発表していくためには必要です。帳さんの作品の中に散りばめられた要素の中で、どれをより磨き上げて武器とし、どう作品に取り入れていくのかを、ぜひ今後意識してみてください。また、画力もまだまだ向上が必要です。表情や印象的なシーンを丁寧に描いてはいるので、画力向上によって更に帳さんの作品を、読者の心に残るものにすることができると思います。期待しています!