佳作 + 審査員特別賞 |
デビュー!! 『狼男と付き合うまでの話』 佐久間長寿(さくまちょうじゅ) (賞金30万円+副賞+5万円) Kiss8月号・BE・LOVE電子版8月号・「パルシィNEXT」に掲載!! |
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上田美和先生 講評全文 |
絵に味がありますね。現実離れしたストーリーに画風がマッチしてるのがいい。導入部分のインパクトがすごくてこの二人に何が?と思わず引き込まれます。基本モノローグと会話で話が進みますが言葉のチョイスがいいのとテンポが軽快でサクサク読め、とまどいながらも新しい世界にチャレンジしていく主人公の心模様がコミカルだけどリアルで親近感がわきます。前半が「静」だった分、ラスト付近の大きく動く展開はドキドキしました。 全体的に楽しめたしこの作風は崩さないでほしいのだけど、欲を言えば絵で表現する工夫が欲しかった。例えば二人が一緒に飲むシーン、どんな風に楽しいか具体的に絵で見せられると楽しい感じがより伝わると思うし大切な見せ場になるはず。p.28の「なんかもう いっか」の流れになるのが、まぁわかるしこれもありなんだけどもう一押しこの人といたい、この人のことを知りたいっていうのが見たかった。ラストがあっさり終わったのもちょっと物足りない感じ。お互いの顔をアップにしてセリフにも「溜め」があると、より印象的になったと思います。とても面白かったので見せる工夫が加わればよりレベルアップすること間違いなしなので今後の活躍に期待大です。 |
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審査員特別賞講評 | 犬かわいい。ほのぼの平和なのに時々ドキッとさせられる展開を差し込んでくる配分が絶妙でこれだと思いました。一番個性が光って見えた作品です。 |
佳作 | 『母の恋人』 押花百栞(おすばなひゃっか) (賞金30万円+副賞) BE・LOVE電子版8月号・「パルシィNEXT」に掲載!! |
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上田美和先生 講評全文 |
絵に迫力があって上手いです。構図やコマ運びにセンスを感じる。出だしの摑みが見事。何かすごい展開が始まる期待感がある。母の回想と母の恋人の回想、作中に2種類の回想があって作品の4分の1が回想シーンなので読者がリアルのライブ感で追いかけられない難しさがありますが、表現力があるので一気に読まされてしまいます。主人公の複雑でやり場のない気持ちを煙という小道具で印象的に見せたり、キャラの表情や仕草、構図、瞳の描き方、トーンの貼り方全てに感情がこめられているのがすごい。お墓についた氷の結晶、その冷たさ、空気感、母の死を改めて痛感した時の砕けたコマ割りと散りばめられた氷の結晶はせつなく痛みが伝わってきて秀逸。この表現力はこれからも作品を作る上で大きな強みになると思います。 |
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佳作 | 『春の華は手折られない』 荒田真哉(あらたしんや) (賞金30万円+副賞) BE・LOVE電子版8月号・「パルシィNEXT」に掲載!! |
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上田美和先生 講評全文 |
作品としての完成度がすごく高いと思いました。絵が華やかで見せ場のシーンも美しくゴージャスで印象的。主人公のキャラクターに一本筋が通っていてかっこいいので読んでいて応援したくなります。背景や衣装が丁寧に書き込まれていて映画を観るようにこの作品の世界観を堪能できるのも楽しい。持ち出し禁止の木簡が最初の方にさり気なく置かれていたり細かな気配りがされているのもよかった。 ストーリーはよくまとまっていて読みやすくソツがないのですが、ワクから外れない感じが少し残念に感じるところでしょうか。先が読めてしまうというか…それが悪いわけではないのですが。構成力、画力共に力のある方だと思うしとても面白く読めたので自分なりの視点や個性が上乗せされるとより作品が輝きだすと思います。 |
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奨励賞 + 編集部特別賞 |
『無形のエクリチュール』 マツダイヨ (賞金5万円+3万円) |
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上田美和先生 講評全文 |
絵柄がとてもかわいくて描きなれてる感じ。ドラマチックな見せ方も上手い。初見で見た時はなんでこれ佳作じゃないの? と思うほど面白く読めたし読後感もいいです。ただこれ友人になるサヤの方が主人公属性が強いというか魅力的といいますか、実際に何か出来事がある度に具体的に努力しているのがサヤなので主人公が受け身に見えてしまいます。 サヤ次第で主人公の動向が変わるので主体性がないように思えたのが気になったポイント。例えば最後のシーンで自分から漫画を見せてと言うだけでも主人公みが出たと思います。マユの心理描写はとても丁寧に描かれていてどんなキャラか生きてきた背景などもよく伝わってくるので行動する勇気をもっと見てみたかったです。 |
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奨励賞 | 『そういうはなし』 工藤諒二(くどうりょうじ) (賞金5万円) |
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上田美和先生 講評全文 |
イラストレーターをされているそうで、どうりで絵がめちゃくちゃお上手です。キャラの描き分けもお見事。お友達のキャラがすごくよくてこの子の婚活パーティーも見てみたいと思いました。終盤の突然のサイコホラー展開にびっくりしてそれまでのお話がぶっ飛ぶほどの衝撃でしたがその後のドタバタで主人公の頑なな心がなぁなぁになっちゃった感じが惜しい。この手の作品で読者が見たいのは刺激的な急展開ではなく人の心の変化だと思うので、サイコホラーの彼の分量を減らしつつイケメン兄ちゃんとのやりとりをもっと分厚くしてもよかったかも。とはいえ個人的にはこのサイコホラー展開、結構ツボってお気に入りです。このサイコな彼のお話も別の作品で読んでみたいと思わせるほどの存在感。イケメン兄ちゃんもかっこいいし魅力的なキャラを作る力は存分にある方だと思うので次回作も期待しています。 |
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編集部特別賞 | 『そういうところが好きですよ』 噛無仁(かむじん) (賞金3万円) |
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上田美和先生 講評全文 |
既に連載など経験されている作家さんのようで、なるほどこのままどこかの雑誌に載っていそうなクオリティだと思いました。なぜこれが佳作じゃないのか? 個人的には充分面白く読めたので僭越ながら届かなかった部分を考察してみたいと思います。絵は上手くキャラも魅力的に描かれていてお話づくりも上手。表情やシーンの見せ方もどれも達者でこなれています。背景も丁寧に描き込まれていて現場のリアルな感じが伝わります。ただ主人公の失恋から次のときめきまで全て佐野のお膳立てで事が進んでしまっている。主人公は何をしていたかというと真面目に働く良きチューター。何か自分から動くという事をしていない。起こる出来事にその都度対処しているだけでただ流されているようにも見える。 年下がグイグイ押してくる感じはときめくしとても良いのだけれど、主人公に主体性がないから誰でもいいのかなという印象を与えかねない。53ページというボリュームなのにラストがいきなり終了した感じも惜しい。お話を失恋から始めて年下との恋愛に集中した方がコンパクトになってよかったかもしれません。 |
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上田美和先生 【総評】 |
どの作品もレベルが高くとても楽しく拝見しました。私の担当さんと話していて知ったのですが今は受賞作全てが雑誌に掲載されるわけではないのですね。そういう意味では受賞は喜ばしい事ですが雑誌に掲載されてからが本当のデビューと言えます。なかなかに厳しい世界ですが今回の投稿作はどれもが輝いていたのでぜひ今後も頑張って作品を作り続けてほしいと思います。皆様の未来に明るくワクワクする展開が訪れますように。心より応援しています。 |
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